このところ、男物の長着や羽織のお仕立て依頼が増えてきました。
今の傾向として、高身長で細めの体型に裄も長めということが言えます。通常の仕立て方ですと、身巾が広いために着づらくなります。それを解消するのには袖の「割り入れ」をお勧めしています。
以前、13代九重部屋(元横綱・千代の富士)の“力士の着物”を数多く手掛けた際に、身頃と袖に「割り(はぎ)」を入れていましたので、この方法はお勧めです。
特に先代の女将さんが着物に深い知識をお持ちでしたので、力士が着用した際に映えるような仕立て方を望まれて、細部まで指示を出し点検をされていました。それらがとても勉強になり、今も役に立っています。
つい先日、不二家のチョコ菓子「チョコまみれ」でお馴染みの可愛いキャラクターに、時津風部屋の幕内力士「豊山」が染められた反物を、女物の浴衣に仕立てるというご依頼がありました。
その柄の奇抜さに最初は何だろうと戸惑いましたが、弟子たちも大変面白がっていましたし、着たら周りの眼を引くことでしょう。江戸の昔からの庶民の“遊び心”が連綿と続いているように感じられます。
前野まち子